アルツハイマー病の症状

認知症の原因として最も多い『アルツハイマー病』。 アルツハイマー病とは、βアミロイド蛋白と呼ばれる異常な蛋白質が脳全般に蓄積するために、 脳の神経細胞が変性・脱落する病気です。脳を構成している神経細胞が通常の老化よりも急速に、 いわば病的に減ってしまうこと(変性)によって、正常な働きを徐々に失っていき、認知症になっていきます。 出来事自体を忘れてしまうような「もの忘れ」から始まるのが特徴です。
原因はまだわかっていませんが、最近では、遺伝的な要因に加えて発症に生活習慣が関係するのではないか、と考えられています。
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■アルツハイマー病の症状

初期には、少し前の記憶がなくなる物忘れが現れる

「アルツハイマー病」では、「物忘れ」が特徴的な症状として現れます。 アルツハイマー病は認知症の原因となる病気の中で最も多く、約半分を占めているともいわれています。 日本では、アルツハイマー病の患者数は増加傾向にあります。現在、65歳以上の人の約3.4%がアルツハイマー病で、 患者数は約120万人と推計されます。症状は「記憶障害」から始まりますが、次第に日常的な動作ができなくなり、 進行すると話すことも歩くことも困難になります。寝たきりになって、「肺炎」などの合併症を起こして命にかかわることも あります。発病からの生存期間は、多くの場合、3〜5年ほどです。

”親がアルツハイマー病だと自分もなりやすいのではないか”と考える人がいます。 確かに遺伝が関与するタイプのアルツハイマー病もありますが、全体のわずか1%ほどです。 アルツハイマー病は、基本的に遺伝性の病気ではありません。 ただ、遺伝子の研究が進むことで、アルツハイマー病に関係する遺伝子の存在が次々と明らかになってきています。


●症状

記憶障害や遂行機能障害などが徐々に進んでいく

アルツハイマー病は徐々に進行していく病気です。そのため、進行の段階によって、異なる症状が現れます。 進行段階は、「軽度」「中等度」「高度」の3段階に分けられます。 「認知機能テスト」である「MMSE」の点数で見ると、30点満点中、軽度では23〜17点、中等度は19〜10点、 高度は13点以下程度です。

◆軽度の認知段階の主な症状

少し前の出来事を脳にメモしておくような機能が損なわれ、記憶障害が現れるようになります。 そのため、同じ質問を何度も繰り返したり、物をどこかに置き忘れたり、約束したこと自体を忘れたりします。 また、年月日があやふやになってきます。このような症状のため、働いている人では、 失敗を繰り返して仕事に支障を来すようになります。 主婦では、同じものをいくつも買ってしまったり、毎日同じ料理を作り続けたり、 火の不始末を起こしたりするなど、買い物や食事の準備での失敗が多くなります。

◆中等度の段階の主な症状

自分のいる場所がわからなくなるため、初めは家から遠い場所で道に迷うようになり、次第に近所でも迷うようになります。 また、1人での買い物や、季節に合った衣類を選ぶことができなくなります。 入浴することを忘れ、何日も入浴しないというようなことも起こります。 自動車の運転も危なくなります。感情の起伏が激しくなって、大声を出したり、睡眠障害が起こったりします。

◆高度の段階の主な症状

人物がわからなくなって、夫や妻、自分の子供もわからなくなります。目的を持った行動が取れなくなるため、 衣類をきちんと着たり、入浴時に体を洗ったり、排便後にきちんと拭いたりすることができなくなります。 トイレの場所もわからなくなり、尿や便の失禁が生じます。言葉が失われていき、使える言葉が減ってきます。 歩行能力も低下して、寝たきりになることもあります。


●脳の変化

アミロイドβが蓄積し、タウたんぱくが凝集する

アルツハイマー病は脳が委縮する病気で、萎縮は記憶を司る「海馬」から始まります。 その後、脳の委縮は側頭葉、頭頂葉にも広がっていき、記憶障害以外の症状も出るようになります。 アルツハイマー病のある人の脳の神経細胞は、働きが弱まったり死滅したりしています。 脳が委縮するのも、神経細胞の死滅の結果として現れる現象なのです。 神経細胞が弱ったり死滅する原因は、主に次の2つだと考えられます。

◆老人班の形成

アルツハイマー病のある人の脳には、「老人班」と呼ばれる斑点状の病変が現れます。 これは「アミロイドβ」というたんぱくが凝集したものです。 アミロイドβは神経細胞の細胞膜にある「APF(アミロイド前駆たんぱく)」が2ヶ所で切断することで作られます。 アミロイドβはいわば老廃物なので、通常は脳から排出されます。 このアミロイドβが脳から排出されず、神経細胞の外側に蓄積することが、 アルツハイマー病の発症に関与しているとされます。 最近では、老人班ができると、神経細胞の突起同士の接合部である「シナプス」のおける情報伝達が弱まり、 記憶障害が起こると考えられています。

◆神経原線維変化

アルツハイマー病のある人の脳に現れる特徴的なもう1つの病変が、「神経原線維変化」というももので、 神経細胞の中に糸くず状の物質が形成されます。この糸くず状のものは「タウたんぱく」の凝集体で、 リン酸化したタウたんぱくが、線維のような形に固まることで糸くず状に見えるのです。 タウたんぱくは、神経細胞の骨格を担っている重要な物質です。 神経原線維変化は、アミロイドβが蓄積し始めた後に現れます。アミロイドβは記憶障害に関係し、 リン酸化したタウたんぱくによる神経原線維変化は、神経細胞の死滅や、記憶障害以外の症状に関係していると考えられています。

以上のように、アルツハイマー病のある人の脳で、どのようなことが起こっているのかが明らかになってきました。 それに伴い、原因に対して直接的に働きかける、根本的な治療法の研究と開発が進められています。 現在、アミロイドβが凝集することを阻害する薬や、アミロイドβの凝集体やその蓄積を取り除く薬の登場が期待されています。


【アルツハイマー病の危険因子】
まず挙げられる危険因子は「加齢」です。65歳以降になると、年齢が5歳上るごとに有病率が2倍になると言われています。 また、危険因子となる特定の遺伝子もいくつかわかっています。「ADoE」という「アポたんぱく」を作る遺伝子は、 2つの因子の組み合わせでできています。この因子の一方が「ε4」というタイプだとアルツハイマー病が起こりやすくなり、 両方がそうである場合には、さらに起こりやすくなるのです。
一方、疫学調査の結果から、危険因子になるかもしれなとされるものもあります。 「糖尿病」「高血圧」、不整脈の一種である「心房細動」などは、 アルツハイマー病との関連を示唆するデータが報告されています。 その他、家族の中に認知症の人がいる、「意識障害」を伴う頭部外傷を受けたことがある、 「甲状腺機能低下症」や「うつ病」になったことがある、喫煙している、といったことも危険因子になると言われています。