認知症介護の負担を減らすために

・「物盗られ妄想」「興奮や暴力」「徘徊」などが起きたら、その背景に応じた対処を考える。
・介護サービスを上手に利用して、介護する人の健康を守る。
・余裕のあるうちに、介護施設について調べておくとよい。
(*本文は下の方にあります)


●BPSDへの対応

観察・記録し、専門家に相談、対応策を考える

認知症では、「中核症状」として、物事を順序良く実行できなくなる「実行機能障害」や「記憶障害(物忘れ)」などが起こります。 また「BPSD(行動・心理症状)」として、「妄想」「鬱状態」「興奮や暴力」「徘徊」などが起こり、 家族など周囲の人が対処に困ることも出てきます。

◆物盗られ妄想への対処

BPSDの中でも、”財布を盗られた”などの「物盗られ妄想」は、よく見られる症状です。 これは、財布や通帳などの大切なものをどこかにしまったものの、しまったことが頭からすっかり抜け落ちてしまい、 財布や通帳が見当たらないことを合理的に説明するために、「盗られたに違いない」と妄想を作り上げるものです。 患者さんは、財布や通帳をしまった記憶がないため、不安や焦りを感じています。 疑われるのは、身近で世話をする家族がほとんどで、息子の嫁や自分の娘などを犯人扱いすることが多いのですが、 疑った相手を日ごろから恨んでいるというわけではありません。このような場合、反論したり言い訳をしたりしても、 聞き入れないので、騒がずに一緒になくなったものを探すとよいでしょう。 繰り返す場合にも、毎回、淡々と対応するようにします。しまい忘れる場所は、何回か繰り返すうちに見当がつくようになります。 いつも疑われる人に対するサポートも大切です。病気のせいとはわかっていても、理不尽に疑われるのはつらいものです。 他の家族は疑われる人の心中を察し、いたわりを忘れないようにしましょう。

◆「興奮や暴力」への対処

患者さんが夜中に興奮して大声を上げたり、些細なことで暴力をふるったりすることがあります。 興奮や暴力が見られるときは、まず危険を避け、介護をする人の身の安全を確保することが最も大切です。 冷静になるのが難しいこともあることがあると思いますが、患者さんを観察して、「いつ、どこで、どんな状況で、どの程度」 の興奮や暴力が起こったかをできるだけ具体的に記録しておきましょう。

◆興奮や暴力への対処

患者さんが、夜中に興奮して大声を上げたり些細なことで暴力をふるったりすることがあります。 夜中に興奮するケースでは、実際にはないものが「幻視」や、病的な寝ぼけである「夜間せん妄」が起こっていることがあります。 興奮や暴力が見られるときは、まず、危険を避け、介護する人の身の安全を確保することが最も大切です。 患者さんを観察して「いつ、どこで、どんな状況で、誰に対して、どの程度」の興奮や暴力が起こったかをできるだけ 記録しておきましょう。落ち着いて状況を整理すると、唐突に見えた興奮や暴力の裏に本人なりの合理的な理由を 介護する人が考えるとともに、担当医に相談し、専門家と一緒に対応を考えるようにしましょう。

◆「徘徊」への対応

徘徊にはさまざまな状況があります。例えば、患者さんが自分のいる場所がわからなくなって、「家に帰る」と自宅を出てしまう。 歩いているはずのない遠隔地の実家に向かって、突然歩き始める。 家族の姿が見えないので、不安になって家の外に探しに出てしまう。 外出時に暗くなって道に迷うなど、患者さんごとに異なります。 患者さんがいなくなって必死に探しまわったり、警察から保護したとの連絡があって駆け付けたりするなど、 周囲の人が振り回され続けることも多いのですが、まず、冷静に前後の状況を考えてみましょう。 「目的地は合理的か(今はない実家に行きたがったり、遠く離れているのに歩いてい行こうとするなど)」 「じっとしていられないか」「はぐれたのか」』などによって、対応が異なります。

徘徊が起こった状況をできるだけ冷静に観察・記録し、その理由を自分で考えるとともに担当医に相談してください。 理由が推測でき、対応が考えられる場合もあります。また無目的で、止めるのが困難な激しい徘徊の場合は、 一時的な入院や薬による治療が必要なこともあります。 患者さんがいなくなった時に見つかりやすいように「衣服に名札を付ける」「名刺をバッグや服のポケットに入れておく」 「GPS」機能付きの携帯用電話をバッグに入れるなどのほか、近所の人や警察にもあらかじめ頼んでおくといよいでしょう。


●介護が難しいとき

介護の負担を分担し、介護者の健康を守る

介護の負担を分散し、介護者の健康を守る

◆薬により改善を図る

BPSDにより、介護する家族などの負担が大きかったり、危険が及びそうなときは、薬による治療も検討されます。 特に妄想や幻視、興奮や暴力、睡眠障害など、家族の負担が大きい症状には、環境調整と並行して適切な薬物療法が 必要になります。薬を使うときは、副作用に注意しながら、慎重に使います。 なお、効果の有無は患者さんによって異なります。

◆介護の負担を分散する工夫

自宅での介護の負担が大きくなり過ぎ、介護をする人が体調を崩したり、心の健康が保てなくなったりしたのでは、 元も子もありません。最近は高齢者の夫婦間の「老老介護」も少なくありません。 特定の人に介護の負担が集中しないように、家族全員が協力して、介護の負担を分担しましょう。 また、「介護保険制度」も利用しましょう。自宅にいて利用できる「居宅サービス」には、 @自宅をヘルパーが訪問する「訪問介護」A日帰りで通所サービスを受けられる「デイサービス」 B施設に短期間入所する「ショートステイ」などがあります。これらのサービスを上手に利用して、 介護をする人がゆっくり休んだり、自分の時間を持てるようにしましょう。

また、自宅での介護が困難になった場合には「施設サービス」を受けることができます。 施設にはいろいろな種類がありますので、あらかじめ調べておくとよいでしょう ”いざとなったら○○がある”と考えることができれば、自分を追い込まずに済みます。 患者さん、介護をする人の両者とも心身に余裕があるうちに、施設入所を考えておく方が、いざというとき、 冷静な判断や選択がしやすいものです。