認知症のサインを見逃すな

認知症の「予備軍」である軽度認知障害は、気付きにくく、判断するのは簡単ではありません。 この段階で発見するためには、日常の場面で現れるサインを見逃さないようにしましょう。
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認知症のサインを見逃すな

■気づきにくい軽度認知障害

日常に現れる小さなサインを見逃さない

軽度認知障害は、健常と認知症の境目のような状態で本人も周りの人もなかなか気付きません。 しかし、よく観察していると、いろいろな場面で小さなサインが出ています。 軽度認知障害を早く発見するためには、日常の場面で現れるサインを見逃さないことが大切です。

●外で人と会うとき

外出するのが面倒になった、服装に気を使わなくなった、約束を忘れて慌てて飛び出すことが増えたといったサインがあります。 外出が面倒になるのは、意欲の低下を表しています。外出先で忘れ物をして恥をかきたくないという心理も働いています。 おしゃれだった人が服装に気を使わなくなるのは、軽度認知障害の重要なサインです。 約束を忘れて、連絡が入ってから慌てて飛び出すのは、認知症とは異なり、約束そのものは忘れていないことを示しています。

●料理をするとき

手の込んだ料理を作らなくなった、味付けが変わった、鍋を焦がすようになったなどのサインがあります。 手の込んだ料理を作らなくなるのは、必要な食材をそろえて手際よく進めていく高度な判断が、難しくなったためです。 味付けは、例えば今まで薄味だったのが濃くなってくるといった変化があります。 鍋を焦がすのは、料理をしていることを忘れてしまうためです。 また、アルツハイマー型認知症では、物忘れより先に匂いがわからなくなることがあり、これが原因になっている可能性もあります。

●仕事のとき

同じ質問や確認を繰り返すようになります。新しい機器やソフトの使い方を覚える気がしなくなったり、ネクタイを結べなくなったりもします。 同じ質問や確認を繰り返すのは、物忘れによるものです。新しい機器やソフトの使い方を覚える気がしなくなるのは、記憶力や判断力などが低下して、 新しいことにチャレンジする意欲が失われているからです。ネクタイをしようとして結び方がわからなくなるのは、軽度認知障害の大事なサインになります。

●そのほかのサイン

洗濯物を干し忘れる、好きだったドラマを見なくなった、財布に小銭が溜まるようになった、などのサインがあります。 洗濯物を干し忘れるのは、洗濯していることを忘れてしまうためです。 好きだったドラマを見なくなるのは、興味や関心が薄れたり、物語の展開についていけなくなることが影響しています。 財布に小銭が溜まるのは、細かい計算が難しくなって、お札で払うようになるためです。
こうしたことは健常な人にもある程度見られますが、軽度認知障害があると、これらのサインが急に増える、いくつも重なっている、 ときに重要なことまで忘れて周囲が困るといった特徴があります。


■軽度認知障害が疑われる場合

本人の様子を説明できる家族と一緒に受診する

軽度認知障害のサインが2〜3項目当てはまる場合は、かかりつけ医に相談しましょう。 住んでいる地域の地域包括支援センターに相談してもよいでしょう。 専門の医療機関には、神経内科、精神科、老年科などがあります。 特に物忘れ外来を標榜する医療機関が勧められます。 受診の際は、同居する家族や周囲の人ができるだけ付き添いましょう。 物忘れがあると、「取り繕い現象」といって、物忘れなどを隠そうとすることがあるため、身近な人からの情報が必要です。 付き添う場合は、医師に伝え忘れなどがないように、ふだんの様子で気になること、いつから症状があるのか、 その後の経過などをメモして持っていくとよいでしょう。 薬の影響で認知症のような症状が起こることがあります。お薬手帳も持って行ってください。

●軽度認知障害の診察

問診で、症状や経過などについて伝えます。認知機能テストやMRI(磁気共鳴画像)など脳の画像検査も行われます。 軽度認知障害の疑いがあるかどうかを、短時間で見つけられる検査法(タッチパネル式の軽度認知障害の検査)も開発されています。 また、脳や脊髄の周りを循環している脳脊髄液を採り、アミロイドβたんぱくなどを調べる検査物注目されています。

◆タッチパネル式の軽度認知障害の検査

タッチパネル式のパソコンを使って、言葉を覚えていられるか、今がいつなのか、図形を認識できるかなど、主に3つの内容をチェックします。 質問は音声だったり、タッチパネルに表示されたりします。質問に合わせて声を出したり、タッチパネルに触れて回答する、 時間にして3〜5分間の簡単な検査です。15点満点で13点だと軽度認知障害の疑いがあり、12点以下だと認知症が疑われます。 13点以下は、さらに詳しい検査を受けます。
認知症や軽度認知障害の早期発見に役立てようと全国200以上の自治体で導入されており、一部の医療機関でも使われています。


■見逃さないために

「誰でも認知症になる可能性がある」と心得る

認知症は珍しい病気ではありません。誰でも発症する可能性があると心得て、サインを見逃さないようにしましょう。 ”認知症だったら怖い”からと、受診を避ける人もいます。しかし、軽度認知障害の段階で発見できれば、認知症を発症しないで済む可能性があります。 「いつもと違う」と思ったら、早めに受診してください。 また、周囲の人も「何かがいつもと違う」と感じたら、気を付けて観察しましょう。 離れて暮らす高齢の家族がいる場合には、実家に一泊し、例えば手料理を味わって味付けに変化がないかなど、 じっくりと観察することも早期発見に役立ちます。 軽度認知障害は、見極めが難しく、検査の後に症状が進むこともあります。 検査を定期的に受けることが大切です。