脳を活性化する暮らし方E

【第25回】外国語を学ぶことで、記憶力や集中力を高めよう。
【第26回】ハイキングをして自然を感じながら気持ちよく歩いて脳をリフレッシュしよう。
【第27回】気になる新聞記事をスクラップして、社会的な関心を広げて思考力を高めよう。
【第28回】囲碁や将棋を楽しみ、対戦相手と駆け引きをしながら思考力や想像力を鍛えよう。
【第29回】メモを持たずに買い物に行き、しっかりと覚えて記憶力を鍛えよう。
【第30回】音楽を積極的に楽しんで脳を広く活性化しよう。
(*本文は下の方にあります)


【第25回】「外国語を学ぶ」

”学ぶ”ことは脳の活性化にとても効果的です。特に、外国語を学ぶ場合は、新しい単語を覚えたり、 文法を理解することが必要なので、記憶力や言葉に関わる脳の機能を鍛えるトレーニングにもってこいだといえます。 また、日本語なら特に意識しなくてもできる「読む、聞く、書く、話す」といった作業も、外国語の場合はそう簡単にはいきません。 「より慎重に目で文字を追う」「聞き漏らさないように耳を澄ませる」「単語や語順を間違えないように書く」 「言葉や発音を意識しながら話す」など、注意力や集中力が必要です。こうした状況では、視覚に関わる後頭葉、 聴覚や記憶に関わる側頭葉、学習や言語に関わる前頭葉、読字や書字に関わる側頭葉などがより活発に働きます。 つまり、外国語を学ぶことは、脳を広範囲に強く活性化するのにとても有効なのです。

「今更外国語を学ぶなんて・・・・・」と思う人がいるかもしれませんが、学生時代とは違って、今なら自分の興味や 関心に合わせて楽しく自由に学ぶことができます。「海外旅行で外国語を使いたい」「好きな外国人作家の小説を原語で読みたい」 「外国映画を字幕や吹き替えなしで楽しみたい」など、目的を作って取り組んでみましょう。 とはいっても、「単語を覚えられない」「覚えた言葉が出てこない」など、思い通りに進まず、 いやになることがあるかもしれません、しかし、「覚えようとすること」「思い出そうとすること」が 脳の活性化につながります。外国語を学ぶ基本は、読んだり聞いたりして脳に入力することと、声に出したり書きだしたりして 脳から出力することの繰り返しです。楽ではありませんが、だからこそ脳が活性化するのです。 焦らず、あきらめず、根気よく続けましょう。 そしてある日、外国人と会話ができたり、外国語のニュースを理解できたりすると、喜びとともに大きな自信にもなります。 外国語を通じて、人とのつながりや異文化への関心が広がっていくと、さらに楽しく学ぶことができるでしょう。


【第26回】「ハイキングを楽しむ」

何かとあわただしい日常から抜け出して自然の中でのんびりと過ごすことは、ストレスの解消になるとともに、 脳の働きにもよい影響を与えます。静かで落ち着いた自然に囲まれると脳がリラックスするので、その機能を回復させる 効果があるのです。自然と触れ合うと注意力が高まるという研究報告もあり、その後の活動や作業の効率が上がることが 考えられます。また、野山を散策して自然を楽しんだり、見つけた植物や虫などに興味を持ったりすると、意欲、創造、 思考などに関わる前頭葉の働きが活発になります。さらに、さわやかな風や鳥のさえずりなどに包まれて心地よさを感じているときは、 脳の深部も活性化しています。このように自然に親しむことは、脳の活性化にとても効果的です。 天気の良い日にはちょっと遠くまでハイキングに出かけてみてはいかがでしょう。 近所を散策するのとは目に入る景色も周りの雰囲気も違うので、視覚に関わる後頭葉なども活性化します。 また、野山の道は土だったり、草だったり、でこぼこだったりするので、運動に関わる前頭葉の運動野や、 バランスを細かく調整する小脳などの働きもいつもより活発になります。

最近は、ハイキングコースが充実し、体力や経験に合わせて標高差や所要時間などを選べる場合も多いようです。 運動不足の人は無理をせず、初級者向けのコースからチャレンジしてみましょう。 ただし、楽なコースといっても、ハイキングは自然が相手です。服装や持ち物をしっかり準備するとともに、 体調や天候などをよく見極めて、安全第一で楽しむことです。 野山を歩くときは、周りの景色を眺めたり、鳥や風の音に耳を傾けたりして、全身で自然を感じるようにすると、 脳はより活性化します。また、地図を見て位置や方向を確認しながら歩くと、空間の認知に関わる頭頂葉の働きも活発になります。 一方、休憩中は空をぼんやり眺めるなどして脳をリラックスさせるのがポイントです。 さわやかな風を感じながら気持ちよく歩いて、脳をリフレッシュさせましょう。


【第27回】「気になる新聞記事をスクラップする」

脳を若々しく保つためは、毎日、脳に新しい刺激を与えることが大切です。 例えば新聞を読んで、政治、経済、国際情勢、文化など、さまざまなジャンルの情報に接触するのもその一つです。 自分に直接かかわることに限らず、世の中の出来事や社会情勢などに広く興味や関心を持つことは、 知識を増やすとともに、思考力の向上にもつながります。 ただ記事を読んで「ふーん」「へえ」などと驚いたり疑問を持ったりしてもそれで終わってしまうことが多いかもしれません。 脳に刺激を与えるという点ではそれでも良いのですが、脳をより活き活きと活性化させるためには、さらに一歩踏み込んで、 もっと詳しく知ったり、深く考えたりすることがポイントです。

そこでお勧めしたいのが、新聞記事のスクラップです。さまざまな情報の中から興味や関心のある記事を見つけて切り取り、 ノートなどに貼り付けていくのです。例えば、医療、環境、年金など、日々の暮らしの中でなんとなく気になっている問題に 関する記事を集めて、自分なりにまとめてみてはいかがでしょう。 スクラップするには、記事をしっかりと呼んで内容を理解しなければなりませんし、気になる記事を見つけて切り取ったら、 それをテーマごとに分類したり、わかりやすく整理して貼り付けることが必要です。 この思考、判断、意欲などに関わる前頭葉を中心とした脳の働きが活発になるのです。 また、関心のある記事をスクラップすると、その分野について詳しくなれますし、それについて考える機会も増えるので 思考力も自然と高まっていくと考えられます。

今日から、新聞を読むときは、はさみ、のり、スクラップ帳を手元に用意して、気になる記事を探しながら読んでみましょう。 スクラップを続けていると、関連するほかの記事も目に飛び込んできやすくなるので、興味や関心の範囲がさらに広がっていきます。 こうしていろいろな記事が増えると、話題も豊富になっていくので、家族や仲間との会話も弾んで楽しくなるでしょう。


【第28回】「囲碁や将棋を楽しむ」

昔から囲碁や将棋は中高年の趣味として人気ですが、頭を使って対戦するこれらのゲームは、楽しみながら脳を広く活性化させることから、 脳の老化予防の面から見てもとても有効だと考えられます。アメリカの研究でも、チェスなどのボードゲームを習慣にしている 高齢者は、認知症になるリスクが低くなることが報告されています。 囲碁や将棋を楽しむには、ルールや戦術を理解したり覚えたりして作戦を立て、何手か先を読みながら最善の一手を考えなくては なりません。また、対戦者の表情、仕草などから相手の出方を探ったり予測したりする駆け引きも必要です。 この時、思考、創造、集中、注意などに関わる前頭葉や、記憶に関わる側頭葉などが活発に働くのです。 また、指先を使って碁石や駒を動かすので運動にかかわる前頭葉の運動野や、盤上の石や駒の配置を認識するために、 視覚に関わる後頭葉や空間認知に関わる頭頂葉なども活性化されます。このように、囲碁や将棋に没頭しているときの脳は、 広範囲にわたって活発に働いているのです。

また、脳の働きでもう一つ見逃せないのが、仲間との交流です。共通の趣味を通して楽しい時間を過ごしたり、 コミュニケーションをとったりすることは、脳を強く活性化します。さらに、対戦相手を増やしていくと、 それだけ脳が受ける刺激も多くなります。こうしたことが脳を若々しく保つ大きなポイントになると考えられるのです。 かつての愛好者はもちろん、何となくルールを知っているという人や、全くやったことがないという人も、 これを機会に始めてみてはいかがでしょうか。まずは囲碁や将棋のサロン、スクール、カルチャーセンターなどに通うなどして 仲間に加わりましょう。 慣れないうちはルールを間違えたり、なかなか勝てなかったりするかもしれませんが、勝ち負けにこだわるより、 ゲームをきっかけに相手との会話を楽しんだり、友好を深めたりすることの方が、脳の活性化には効果的です。 上手下手はあまり気にせず、週に1回でも仲間と一緒にゲームを楽しみましょう。


【第29回】「メモを持たずに買い物に行く」

年を取るにつれて「新しいことをなかなか覚えられない」「覚えたのにすぐ忘れてしまう」といったことが多くなっていませんか? 脳の老化にともなう記憶力の低下をできるだけ防ぐにはふだんから覚えたり思い出したりする記憶力のトレーニングを意識的に行う ことがポイントになります。記憶に深く関係しているのは、大脳辺縁系にある「海馬」という部分です。 新しい情報はまず海馬に伝わり、そこで一時的に保持されます。また、思い出すときは、その情報に関連する物や場面などを 思い浮かべたり考えたりするので、前頭葉や側頭葉なども連携して働きます。ところが、年をとったり、記憶する機会が 少なくなったりすると、海馬の働きが低下したり、神経細胞同士の連携がスムーズにいきにくくなったりするのです。

そこでお勧めしたいのが「メモを持たずに買い物に行く」です。買い忘れ対策には必要なものを書いたメモを持っていくのが 鉄則ですが、あえてメモに頼らず、記憶力をフル稼働させようというわけです。 例えば、朝食用の牛乳、パン、バナナを買うとします。まずは出かける前に買い物の目的を確認し、買う品物をしっかりと 覚えることが大切です。記憶に残りやすくするには、「紙に書いて文字を見る」「声に出して音で聴く」など、 視覚や聴覚を使うのがポイントです。また、「食卓に牛乳、パン、バナナが並んだ場面をイメージする」「買う品数は3点」など、 思い出すきっかけになるものを作っておくのも有効です。

店では買い物の目的や覚えたときのイメージなどを手掛かりにして、多少時間はかかっても思い出す努力をすることが大切です。 ただ、どうしても思い出せなかったり、買い忘れに気付かなかったりすることもあるかもしれません。 そこで覚えるときに書いた買い物メモは持参して、会計の前にチェック用として活用するとよいでしょう。 覚える品数は、3〜5程度から始め、できたら1つずつ増やすなど、ゲーム感覚で取り組んでみてください。 こうして日頃から記憶力を試すことは、脳の活性化になりますし、記憶力の維持にも役立ちます。


【第30回】「楽器を演奏する」

私たちの大脳は、大きく「右脳」と「左脳」に分けられます。人と話をしたり論理的に考えたりするときは主に左脳が、 見たり聞いたりしたことを直感的、感覚的に捉えたりするときは主に右脳が強く働きます。 音楽に関わる能力は、右脳との関係が深いとされ、主に左脳が働く言語能力とは異なる部位が活性化すると考えられています。 そのため、日常生活の中に積極的に音楽を取り入れて、左右の脳をバランスよく刺激することは、脳の健康維持や老化予防に 役立つといえます。

音楽は聴くのもよいのですが、脳をより活性化させるなら楽器の演奏がお勧めです。 聴く場合は聴覚に関わる側頭葉が主に働きますが、演奏する場合は、聴くことに加えて、楽器の扱い方や曲に応じた指使いなどを 習得することが必要なので、学習に関わる前頭葉の働きが活発になります。また、両方の手指を動かしたり、楽器によっては 足や口も使ったりするので、運動野も活発に働きます。さらに、楽譜を読んだり、例えばピアノなら腱板の位置を確認したり しながら弾くと、視覚に関わる後頭葉や、空間認識に関わる頭頂葉なども活性化します。 また、楽しく演奏すれば、感情面にもよい影響がおよび、ストレス解消にも有効です。

部屋の片隅などにほこりをかぶっている楽器があれば、ぜひ手に取ってみてください。 昔、習ったことのある楽器なら、体が覚えていてうまく演奏できるかもしれません。 演奏経験がほとんどない人も、とにかく何か始めてみることです。 好きな曲に合わせて太鼓やカスタネットを鳴らすなど、簡単なことからチャレンジしてはいかがでしょう。 すでに演奏を楽しんでいる人は、新しい曲やちょっと難しい曲に取り組んで、脳に刺激を与えましょう。 また、一緒に演奏する仲間がいると、楽しく取り組め、続ける励みにもなります。 仲間に聴いてもらったり、みんなで演奏したりすれば、喜びや満足感がより大きくなり、脳もますます活性化するでしょう。