耳鳴り・難聴と認知症B脳の動脈硬化と耳鳴り・難聴

脳の動脈硬化は耳鳴り・難聴を招き、血管の老化を促す食生活で低年齢化が加速。
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■動脈硬化と耳鳴り・難聴

肥満で耳鳴りの人を詳しく調べたら、脂質異常と動脈の詰りがみつかっった。

耳に関する訴えで中高年の患者さんに多いのは「耳が詰まった感じがする」「雑音がかぶって音声が聞き取りにくい」 「虫の鳴き声がする」といった耳鳴りや難聴の症状です。耳鳴り・難聴の原因はさまざまで、必ずしも耳や脳の病気とは限りません。 ストレスや疲労が大きくなると、心臓の鼓動や血液が流れる音に敏感に反応して耳鳴りを感じることがあります。 脳や体の動脈硬化が進んで耳鳴り・難聴が起こる場合もあります。動脈硬化が耳鳴り・難聴の発症にかかわっているとわかったのは、 そう古いことではありません。2004年と2007年に日本の国立長寿医療センターが頸動脈内膜中膜肥厚(IMT)という病気が 耳鳴り・難聴の原因になるという論文を発表しました。IMTは、首の頸動脈を形成している内膜や中膜と呼ばれる層が厚くなって、 動脈硬化を進行させる病気。糖尿病や高血圧、脂質異常症(高コレステロール血症)などの病気がIMTに関係しています。 また、米国の国立衛生研究所の一部門であるアメリカ糖尿病学会からも、同じような趣旨の研究結果が発表されています。 この論文では「糖尿病患者は3倍も認知症になりやすい」と報告されています。

ある医師が経験したことですが、今から10年ほど前に、70代男性の診察を通して動脈硬化と耳鳴り・難聴の関係に気付いたそうです。 この患者さんは肥満体で周波数の高い音だけ聞こえず、ひどい耳鳴りも訴えていました。有名な耳鼻咽喉科を訪ね歩き、 すべて「年のせい」と片づけられてきたそうです。その医師はこの患者さんの体型を見て精密検査を受けることを勧めたそうです。 すると、血液検査で脂質異常症と判明。更に超音波を使って、血管の内壁についている脂肪量を計測する検査を行った結果、 左頸動脈がプラーク(余分な脂肪が内膜の一部にたまってできた盛り上がり)によって、ほとんど詰まっていたのです。 頸動脈が詰まっていれば脳だけでなく、全身で動脈硬化も進んでいる可能性が高くなります。 そこで、その医師はその患者さんに病院の循環器科を紹介しました。以後、その医師は耳鳴り・難聴の患者さん56人に対して 検査を行い、90%以上の患者さんに頸動脈内膜中膜肥厚を確認しています。患者さんの大半は、頸動脈内膜中膜の正常な厚みよりも 0.5〜0.7ミリも厚くなってから、耳鳴り・難聴に気付くことが多くあるそうです。

頸動脈は耳の後ろで二股に分かれています。川が二方向へ別れる場所にゴミがたまりやすいのと同じく、血管の分岐点も 余分な脂肪などがたまりやすい場所です。そのため耳の後ろの頸動脈を診れば、体全体の動脈硬化の状態を予想することが できるのです。動脈硬化と関係の深い病気の治療では、コレステロールを下げて血流を促す薬が補助的に処方されます。 ところが、コレステロールは細胞膜を構成する成分のため、コレステロールが不足すると細胞自体が弱くなります。 すると細胞で構成されている血管もボロボロになるのです。薬を飲んで血液がきれいになっても、超音波による検査を行うと、 血管はボロボロということが少なくありません。


ウォーキングは心臓と足の筋肉の機能を高め動脈硬化を改善して、耳鳴り・難聴を撃退

耳鳴り・難聴は高齢者の悩みという印象を持つと思います。しかし、最近は、40代以下の若い世代の患者さんが増えてきました。 ヘッドホンステレオで、大音量の音楽を聴いて通勤・通学する人は大勢います。それに加え患者さんの低年齢化は、 食生活も無関係ではないでしょう。ファストフードやスナック菓子など糖分や塩分、脂肪が多く、カロリーが高い食べ物が 好まれるようになりました。いろいろな食品をバランスよく食べていればいいのですが、偏った食事は鉄分やビタミンCなどの 栄養を十分補給できないうえに、血管の老化を促してしまいます。その結果、動脈硬化は進行し、聴力に関わりのある 末梢の神経に障害が起こって、耳鳴りや難聴が現れてしまうのです。

動脈硬化が進んだ人でも、食事内容を見直してコレステロールを下げる努力をしたり、適度に運動を行ったりすれば、 血管に若さを取り戻すことは可能です。特に、血管壁をリズミカルに刺激するような運動が効果的です。 動脈硬化が進んでいる耳鳴りや難聴の患者さんはカロリー控えめの食事と、心臓に負担のない有酸素運動が勧められます。 特に、こまめに水分を補給しながらのウォーキングは「心臓のポンプ作用」と第二の心臓といわれる 「足の筋肉のポンプ作用」との相乗効果で、血管を適度に刺激。血管が本来持っている柔軟性や弾力性を回復するのに 好都合な運動です。実際にたくさんの患者さんが、脂肪や糖の少ない食事に変え、1日60分を目安にしたウォーキングを半年ほど 行って、頸動脈の内膜中膜肥厚を0.1ミリ以上のペースで減らしています。カロリー控えめの食事と運動を習慣づけた患者さんの多くは、 1年足らずで耳鳴り・難聴が改善しています。