耳鳴り・難聴と認知症E

耳鳴り・難聴はうつ病や認知症を合併しやすく、更年期以降は聴力に要注意。
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■耳鳴り・難聴・めまい

耳鳴り・難聴・めまいは併発することが多く、老人性難聴の場合は合併症がさらに増大

余計な音が聞こえる「耳鳴り」、音声が正確に聞き取れない「難聴」、姿勢や足元が不安になる「めまい」。 症状としては珍しくありませんが、脳の働きに影響を与えることがわかってきました。 耳鳴り・難聴・めまいは、いずれも耳の鼓膜の奥にある「内耳」という部分が関係しています。 内耳には、外部から入ってきた音を脳に伝えるための重要な器官が集まっています。 空気の振動を電気的な信号に変換する「蝸牛」、電気的な信号になった情報を脳に伝える「聴神経」など。 その他、体の平衡感覚を司る「三半規管」もあります。内耳の器官に何らかの問題が起こると、耳鳴り・難聴・めまいは 発生するのです。年齢が上がるにつれて耳鳴り・難聴やめまいを感じる人の数は増える傾向にあります。 大きな原因は加齢によるものです。加齢による難聴は「老人性難聴」と呼ばれ、周波数の高い音(ブーンという蚊の羽音など) が聞こえなくなるのが特徴です。さらに、小さい音の聞き取りが困難になり、連続した音が途切れて聞こえることが少なくありません。

国立長寿医療センターの研究によると、65歳以上の高齢者で難聴の人は1500万人に上ると推定されています。 25デシベル以下の音(ひそひそ話ぐらいの音量)が聞こえない難聴者の割合は、50代で6%、60代で21%、70代で53%、80代では79%と 年を取るとともに増加しています。耳鳴り・難聴・めまいは併発することが多く、耳鳴りを感じる人の約90%に難聴があり、 難聴を訴える人の約50%に耳鳴りが認められます。聴覚障害を持つ人は、60代で44%、70代で66%、80代では90%におよびます。 つまり後期高齢者では大半の人が聴覚障害を持っていることになるのです。アメリカやドイツの調査でも、人口の4分の1が 耳鳴りの経験者という結果が出ています。年代別では、40代で12%、50代で15%、60代で25%、70代で38%と、年を取るとともに 増加することが報告されています。

老人性難聴には「キーン」「ジージー」「ピーッ」といった金属音やセミの鳴き声・電子音 のような高音の耳鳴りを伴うことが少なくありません。また、老人性難聴の2〜3割は立ちくらみやふらつきなどを合併しています。 年を取ることによって内耳の機能が低下し、平衡感覚が乱れることが原因と考えられます 内耳の老化は意外に早く、20歳を過ぎたころから始まります。しかし、実際に聴力の低下を自覚し始めるのは、先に紹介した 調査結果でもわかるように50〜60代以降です。耳鳴り・難聴やめまいが起こっている中高年者の場合、注意しなければならないのは 認知症や鬱です。米国加齢研究所では、36〜90歳の男女639人を対象に、難聴と認知症との関連性について調べました。 4年間に渡る追跡調査の結果を、米国ジョンズ・ホプキンス大学・耳鼻咽喉科の研究グループが分析したところ、 聴力が正常な人と比べて、26〜39デシベルの音が聞きづらい「軽度難聴者」は認知症発症の危険度が約2倍、 70デシベル以上の音が聞きづらい「高度難聴者」は、約5倍も認知症を発症する危険度が高いことがわかったのです。 図書館のような静かな場所の音が約40デシベル、会話するときの声が50デシベルです。


●鬱病に注意

聴覚障害がある人は鬱になりやすく、男性は危険度が3倍も大きくなるとがわかった

さらに、慶應義塾大学耳鼻咽喉科のグループが群馬県で行った調査では、聴覚障害や視覚障害を持つ人はうつを発症しやすいことが 判明しました。男性の場合は聴覚障害があると鬱になる危険性が3倍以上も増大。そのうえ、聴覚障害と視覚障害を併せ持つ人は、 男性で6倍、女性では4倍も鬱になりやすいことがわかったのです。 また、耳鼻咽喉科を受診した鬱の人が耳鳴りや耳の閉塞感を訴えた割合は32%、めまいふらつきを訴えた割合は28%でした。 うつの人の約3分の1が、耳鳴りや耳が詰まって聞こえにくいと感じ、めまいなどを併発していたのです。

耳からの情報が激減すれば、脳への刺激が減って、脳の老化が進行してしまいます。また、音声が聞きづらいと家族や社会との コミュニケーションが取りにくくなり、テレビ番組・音楽・その他の趣味も楽しめなくなります。 その結果、人と会うことを避けたり、社会活動に参加しなくなったりして引きこもり、生きがいを喪失して、認知症や鬱を 発症するのではないかと考えられます。 注意したいのは、更年期と呼ばれる40代後半〜60代前半の年齢の人です。この年代は加齢性の難聴が始まる時期とちょうど重なります。 更年期障害の不定愁訴で耳鳴りを訴える人がいますが、婦人科の治療で改善しない時は耳鼻咽喉科も受診しましょう。 少しでも耳の聞こえが悪いことを自覚したり、ご家族に難聴の兆候が見られたりしたら、認知症や鬱の予防のために専門医を受診し、 必要に応じて補聴器を使うことも検討されるといいでしょう。